AEDとは?

AEDとは、自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)のことです。世界各国で突然の心肺停止は死因の上位に挙げられていますが、これはいつ、どこでも誰に対して、前兆なく起こることがほとんどとなります。突然の心肺停止の約85%が通常の調律を失い、リズミカルに心臓が拍動する代わりに小刻みにただ震えるだけで、ポンプ機能としての役割を失い、全身への血液の供給不良が起こってしまうという不整脈状態です。このような場合、事態を改善するにはAEDを使用して、心臓に電気的ショックを与えることが唯一の手段とされています。
 1992年にアメリカ心臓協会(AHA)によって改定されたCPRガイドラインから心臓突然死の救命率向上には現場での早期除細動の重要性が明記され、2000年改定ではさらに、
一般市民が行うAEDの使用の正当性が述べられています。
 AEDの概念は、1990年にLeonard A.Cobb教授を中心としたAHAのCPR将来検討委員会に始まり、このときに携帯型自動除細動器を企業が開発することを要望として出されました。企業がこれに答えて1993年に自動除細動器を開発したことから現実のものとなったのです。
 翌1994年に「心臓突然死を防ぐ新たな戦略としてのパブリック・アクセス除細動(AED)」に関するAHA検討委員会がスタートしました。
 2000年8月に発表されたAHAを中心とした国際蘇生法連絡委員会(ILCOR)の一次救命処置検討委員会が出した勧告声明の中で、早期除細動の施行資格者の拡大が述べられています。従来の救急隊員、消防隊員から、病院内医療従事者(看護婦、呼吸療法士など)、警察官、警備人、ライフガード、航空機客室乗務員、鉄道職員、大規模施設管理者など、市民の命を守る責任のある立場の人々が、
CPR(一次救命処置)に加えて、AEDの取り扱いの講習を合わせて行う勧告を表明しているのです。
 現在、世界で市販されているパブリック・アクセス用AEDの共通の特徴として、バッテリー装着した総重量は2〜3s前後で、サイズは大きな弁当箱程度で小型軽量となっています。除細動機能としては、放電方式として単相性放電に加え、2相性放電を採用しています。2相性放電による除細動は、単相性に比べて少ないエネルギー量で除細動が可能で、高エネルギー通電による心筋障害が少なく、除細動後早期に循環動態が回復します。
 残念ながら、日本においては単相性方式のAEDしか認可されていないのです。バッテリーは5年寿命のリチウム電池で、使い捨て方式になっています。放電回数は、100回から250回と様々でありますが、パブリック・アクセス使用では心臓突然死の発生頻度を考慮すれば、従来の充電式よりもメンテ・フリーのほうが救急隊員以外の一般市民が使用するのに適しているのです。
 表示に関しては、心電図モニターがある機種も一部あり、これは心臓突然死患者の心室細動の確認のみならず、救急患者の一般的心電図モニターして使用もできます。
 操作性に関しては、操作上のミスをなくすための操作ボタンを少なくする工夫がなされており、機種によっては蓋を開ければ、電源スイッチが入り、心電図の解析がスタートし、利用者は除細動ボタンを押すだけのワンボタン式になっているものもあります。
 AEDは広い概念で、体外式除細動器のうち、心電図の解析やエネルギー充電などの部分が自動化されているものすべてが相当します。現在国内で流通しているAEDは、心電図解析からエネルギー充電までは自動で行い、最後の通電だけは人手で行うことから、AEDの中でも"半自動除細動器"と分類されています。
 実は世界中のAEDも
ほとんどはこのタイプですが、最近は米国に端を発するPAD(Public Access Defibrillation)に対応し、通電後のCPR音声指示や、装置の定期的な自己診断など各種の機能が自動化(Automated)されたものも出ており、その取り扱いの簡便性から、国内でも今後は様々な場所で使用されてくるのではと期待されます。