アオリイカの産卵観察が面白くなる話
昨日のブログで、アオリイカの産卵観察に行った際に、上記の画の中にいる「悪いイカ」の話をしましたが
もう少し詳しくお話しします
アオリイカの産卵はオスがメスの体内に、精子が詰まったカプセルの様な物(精莢:せいきょう)を渡します
(写真はFishing Aquariumの辻 晴仁さんのサイトからお借りしました)
そしてメスの体内で受精卵となった卵は、下記の動画のようにメスによって産み付けられます
(2019年6月 福浦にて吉田撮影)
この産卵の最中にオスはメスが外敵から襲われないように守り続けている!…なんて優しいの!
…的な感じに見えますが…
次にこの動画をご覧ください
メスが産卵をしようとしたその矢先、別のオスがやってきてメスに自らの精莢を渡してしまっています
そして、メスはそのまま卵を植え付けます
これは専門用語で「スニーキング」といって、彼女を見つけられなかったオスがとる繁殖行動で、自分の子孫を残すために一瞬の隙を突いて精莢をメスに渡す行為です
まぁ、守ってる彼氏からするとブチ切れ間違いなしの地獄絵図状態ですが、彼女いないオスとしてはなんとか自分の遺伝子を残すための最後の手段なんですね
動画でも彼氏イカが「コラァ!てめぇ待てー!!💢」って追いかけてますね(笑)
と言う訳で、彼氏イカも自分以外のイカの遺伝子を残さないようにする、男の本能としてメスを守ってる行動だった…訳です
ここで面白いのが
メスが嫌がってない事😅
写真解説:メスの口の周りに刺さってるオスの精子が入ったカプセルの「精莢」
(写真はFishing Aquariumの辻 晴仁さんのサイトからお借りしました)
実はイカのメスは、オスから精子を受け取ってからある程度の数の精子を、ストックして体内に溜めておくことが出来るそうです
そうして色んなオスの精子を受精させることで、生まれてくる子ども達の遺伝的な多様性を高めるのが目的のようです
遺伝的多様性の高さは、病気や環境変化に対する強さを意味し、予測が難しい将来にうまく適応して生き残ってくれる我が子を増やすことに繋がる訳です
なのでスニーキングされてもメスは嫌がった素振りは見せず「来るもの拒まず」状態な訳ですが、彼氏オスからすると「ムキー!💢」状態な訳です(笑)
なので実際メスが卵を植え付けてるその瞬間の受精卵は「そ、それ、俺の子?」状態でオスは見守ってると言う…
内心「これ見守ってる俺って矛盾してない?」的な心情で横にいる事を考えると、ちょっと笑ってしまう話でした
アオリイカはオスが斑点が横長の線状、メスが斑点が丸状です
アオリイカは年魚(一年で一生を終える)であり、産卵期間は半年近くにも及びます
そして殆どのアオリイカが産卵を終えると死んでしまいます
一生のうちの50%を繁殖のために捧げるって考えると、貴重な場面を目にしてる訳ですね
そして稚イカが大人に育つ確率も非常に低く10%未満と言うデータもあれば、1%にも満たないエリアもあるそうです
自然界の厳しさが伝わってきますねぇ~
そんな目線で次回の産卵行動を観察してみてくださいね!
こちらの動画も面白いのでどうぞ☺
<参考サイト>
・スキューバモンスター
東京大学大気海洋研究所でイカの研究をされている笘野哲史博士の解説が分かりやすいです
https://scuba-monsters.com/squid-spawn-sneaking/
・Fishing Aquarium
水中生物の事を非常に詳しく解説されている水族館で魚類飼育員さんのサイトです
https://www.fishing-aquarium.com/entry/2021/04/29/182000
・東京大学大気海洋研究所
イカの雌は腕の中で受精を秘かに操る
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2019/20190121.html